新アリーナ整備事業の追加負担は、40億円
賛成派・反対派の分断ではなく、共に知恵を出し乗り越えるために
豊橋新アリーナ整備事業をめぐり、市民が重く受け止めなければならない数字が明らかになってきました。
アリーナ事業一時中止に伴う増加費用は、2億6,016万7千円。
そして、新アリーナの物価スライド、つまり金利変動及び物価変動等による増加額は、37億9,554万3千円。
この二つを合わせると、40億5,571万円になります。
これは、決して軽く扱ってよい金額ではありません。
市民の皆さんが納めている税金、そして将来にわたる市の財政負担を考えれば、子育て、教育、福祉、防災、道路、公園、地域整備など、市民生活に使うことができたはずのお金でもあります。
だからこそ、この追加負担がなぜ生じたのか、どの判断が影響したのか、市民に対して丁寧に説明する必要があります。
物価スライドそのものは、全国の自治体に共通する課題
まず前提として、物価スライドそのものを単純に批判するつもりはありません。
建設資材費、人件費、エネルギー価格、金利などが上昇すれば、公共事業の費用が増えることは、どの地方自治体にも起こり得ることです。
これは豊橋市だけの問題ではなく、全国の自治体に重くのしかかっている課題です。
物価高という大きな社会課題に対しては、行政、議会、事業者、市民が知恵を出し合い、負担をどう抑え、事業効果をどう高めるのかを考える必要があります。
工期が2年長引いた責任は重い
一方で、今回の新アリーナ整備事業については、「物価高だから仕方ない」で済ませてはいけない部分があります。
それは、事業の一時中止により、工期が約2年長引いたことです。
仮に事業が一時中止されず、工期が2年延長されなければ、その2年分の物価上昇の影響は、一定程度抑えられた可能性が高かった。
つまり問題は、物価スライドそのものではありません。
本来進んでいた事業を政治判断で止めたことにより、結果として工期が延び、その間の金利変動や物価変動等による増加額が大きくなった可能性があるという点です。
ここに、長坂市長の判断による責任の重さがあります。全国的な物価高は誰か一人の責任ではありません。
しかし、豊橋市の新アリーナ整備事業において、工期を長引かせた判断については、市長としての説明責任があります。
一時中止に伴う増加費用も、重く受け止めるべきです
アリーナ事業一時中止に伴う増加費用2億6,016万7千円についても、非常に重い。
これは、施設の機能が良くなるためのお金ではありません。
市民サービスが向上するためのお金でもありません。
事業を一時中止したことによって生じる増加費用です。
本来であれば、支出を抑えられた可能性のあるお金が、政治判断によって追加で必要になった。
この事実を、市政は決して軽く扱ってはいけません。
2億6,016万7千円あれば、通学路の安全対策、公園や街路樹の管理、公共施設の修繕、子育て支援、防災対策など、地域の身近な課題に使えた可能性があります。
だからこそ、この金額は単なる数字ではなく、市民生活の選択肢を狭める重たい負担だと考えます。
市債の活用には一定の理解を
今回の増加分については、約9億5千万円を今年度の一般財源から充て、残りの約28億5千万円を市債で賄うとされています。
市債については、一方的に否定するものではありません。
アリーナや公園整備のように、長期間にわたって多くの市民が利用する施設について、負担を長期に分散する考え方には一定の合理性があります。
今の世代だけで一度に負担するのではなく、将来にわたり施設を利用する世代も含めて負担を分担する考え方は、公共施設整備において理解できる部分があります。
ただし、市債で長期に負担することと、今回の追加負担がなぜ発生したのかという問題は別です。
長期で負担するからこそ、その負担が本当に避けられなかったものなのか、どの判断によって生じたものなのか、市民に説明する必要があります。
長坂市長の判断による責任は避けて通れない
令和6年11月の豊橋市長選挙で、長坂市長は新アリーナ事業の見直し、契約解除を掲げて当選されました。
その後、契約解除に向けた動きが進み、事業は一時中止されました。
しかし、令和7年7月の住民投票では、事業継続に賛成する市民が多数となり、事業は再開へと向かいました。
また、議会が提案した、契約解除にも議決が必要とする条例について、長坂市長は無効を求める裁判を起こしましたが、令和8年5月には市長側が敗訴しました。
この裁判にも公費が使われています。
結果として、契約解除を目指して事業を止めたものの、住民投票でも事業継続が多数となり、裁判でも市長側の主張は認められませんでした。
その結果、アリーナ事業一時中止に伴う増加費用や、工期が長引いたことに伴う物価スライド、金利変動及び物価変動等による増加額という重い負担が市民にのしかかっています。
物価高そのものを市長一人の責任にするつもりはありません。
しかし、事業を止め、工期を約2年長引かせた判断については、長坂市長の責任として明確に説明すべきです。
「丁寧に進める」とは、具体的な行動があってこそ
長坂市長は、「住民投票の結果を尊重し、引き続き丁寧に事業を進めてまいります」といった趣旨のコメントをされています。
しかし、「丁寧に進める」とは具体的に何をすることなのか。
言葉だけでは、市民の不安は解消されません。
40億5,571万円もの追加負担が生じている中で、何を検証し、何を説明し、どのように市民と共有するのか。
そこまで示して初めて、丁寧な事業運営と言えるのではないでしょうか。
私は、本当に丁寧に進めるのであれば、今一度、市役所と事業者主催のワークショップを開催すべきだと考えます。
以前にも市民参加のワークショップは行われました。しかし、事業が一時中止され、完成時期も遅れ、社会情勢も変わりました。
物価も上がり、金利も変動し、市民の不安や関心も変化しています。
だからこそ、改めて市民の声を聞く場が必要です。
自治会に最初に届く不安や不満を、計画段階から受け止めるべき
アリーナが完成すれば、にぎわいや交流が生まれる一方で、周辺地域には現実的な課題も生まれます。
駐車場は足りるのか。
イベント時の渋滞はどうなるのか。
ごみのポイ捨てや騒音は起きないのか。
歩行者や自転車、車の安全は守られるのか。
こうした不安や不満の声が、市民から一番最初に届くのは、多くの場合、市役所ではなく、地域の自治会です。
アリーナ完成後、周辺道路の混雑、ごみの問題、夜間の人の流れ、イベント時の生活環境への影響などが起きれば、まず相談を受け、対応を求められるのは自治会や地域の役員の皆さんです。
だからこそ、自治会を単なる説明の対象として扱うのではなく、計画づくりの段階から重要な当事者として位置づける必要があります。
「完成してから相談してください」では遅いのです。
地域にどのような影響が出るのか。
どの道路が混雑しやすいのか。
どこにごみが捨てられやすいのか。
どの時間帯に生活環境への影響が出るのか。
こうしたことは、地域で暮らしている皆さん、自治会、発展会、商工関係者、周辺住民の声を聞かなければ見えてきません。
だからこそ、自治会、商工会議所、発展会、周辺地域、関係団体、市民が参加する丁寧なワークショップを開催し、期待だけでなく、不安や課題も正面から共有する必要があります。
そのうえで、駐車場対策、渋滞対策、ごみ対策、騒音対策、周辺住民への情報共有、イベント時の連絡体制などを、事前に整理しておくべきです。
アリーナを中心とした30年計画の必要性
アリーナは、建てて終わりの施設ではありません。
完成後、30年間にわたり地域と共に運営していく施設です。
だからこそ、アリーナを中心としたまちづくり計画を改めて作成する必要があります。
この計画は、単なる施設整備の計画ではなく、30年間の事業運営を見据えた豊橋の未来計画です。
そして、5年ごとに見直し、時代の変化や市民ニーズに合わせて改定していくべきです。
さらに、この計画は議会の委員会にも提出し、協議する。
その後、パブリックコメントを実施し、市民全体で共有できるビジョンとして示す。
ここまで行って初めて、市民と同じ方向を向いて進める事業になると考えます。
「丁寧に進める」とは、こうした具体的な行動を伴うものでなければなりません。
分断ではなく、共に知恵を出す段階へ
住民投票で賛成多数となったことで、事業は進むことが決まりました。
これから必要なのは、賛成派と反対派がいつまでも分断を続けることではありません。
賛成だった人も、反対だった人も、これから同じ豊橋で暮らし、同じ公共施設と向き合っていきます。
だからこそ、責任は責任として明らかにしながら、これからは市民全体で知恵を出し、より良い事業にしていく必要があります。
やるなら、ちゃんとやるべき
責任をあいまいにしたまま進めてはいけません。
しかし、対立だけを続けても、豊橋の未来は前に進みません。
物価高という全国共通の課題には、みんなで知恵を出して対応する。
一時中止によって工期が長引き、市民負担が増えた部分については、長坂市長の責任を明確に問う。
そして、これからの事業運営については、賛成派も反対派も、自治会も商工関係者も、市民も事業者も行政も、同じテーブルで課題と不安を共有しながら、より良い形をつくっていく。
これが、今求められている丁寧な事業運営だと思います。
長坂市長には、住民投票の結果を尊重し、丁寧に進めると言うのであれば、その言葉に見合う具体的な行動を示していただきたい。
やるなら、ちゃんとやる。
その覚悟を持って、豊橋の未来に責任を持つ市政運営をしていただくことを期待します。